「ボクシングデー (Boxing Day)」って聞いたことありますか?
実はイギリスでは、クリスマス(12月25日)が祝日なのはもちろん、その次の日(12月26日)も祝日となっています。
そのクリスマスの次の日の祝日が「ボクシングデー」と呼ばれています。
いったい何がボクシングなのか……気になりますよね?
この記事では、ボクシングデーってどんな意味があるのか、何をする祝日なのかを詳しく解説していきたいと思います!
ボクシングデーとは
「ボクシングデー」はクリスマス(12月25日)の翌日、12月26日です。
イギリスでは、この日はクリスマスと同じで正式な祝日とされています。
1871年、ヴィクトリア時代のイギリスでできた祝日です。
ちなみに、イギリスでは祝日のことを「bank holiday」と言います。
Boxing Dayは、bank holidayの一つということになりますね。
ボクシングデーの由来と本来の意味
このボクシングデーの「boxing」は、「box(箱)」という言葉からきています。
決して、パンチする日ではありません(笑)
ではそもそも、box(箱)っていったいなんの箱のことでしょう?
これにはいくつか説があるようですが、主なものを2つ紹介します。
「box=プレゼントの箱」という説
まず、この「box」は「プレゼントの箱」のことを表すという説です。
そうです、クリスマスプレゼントです。
「プレゼントってクリスマスの日にもらうものでは?」と素朴な疑問がわくかもしれません。
確かに、普通はクリスマス当日にプレゼントをもらいますよね。
ですが、実はこのボクシングデーができた1800年代、イギリスではみんながプレゼントをもらえるというわけではなかったようです。
昔から、
- 上流階級(upper class)
- 中流階級(middle class)
- 労働者階級(working class)
と階級の差がはっきりしているイギリスでは、1800年代、クリスマスを楽しめる余裕があるのは上流〜中流階級の人たちでした。
労働者階級の人々は生活していくのも大変で、クリスマスをお祝いしたり、子どもたちにプレゼントをあげるなんてこともなかなかできません。
そんな中、あるひとつの習慣が生まれます。
それが、クリスマスの次の日。
上流階級の人々が貧しい労働者階級の人々に向けて、プレゼントを箱に包んで渡すようになっていったのです。
「プレゼントを箱に包む 」を英語にすると、「boxing up gifts」。
この「boxing」という言葉から、ボクシングデーというものができあがったと言われています。
また、上流階級の邸宅には必ず「使用人」がいます。
この使用人たちも労働者階級です。
毎日、給仕や料理、お掃除をしたりする使用人たちは、もちろんクリスマスの日も休んでいられません。
それどころか、クリスマスにはたくさんの人々が集まってパーティーをするので、いつもより食事も豪華にしなければなりません。
使用人たちにとっては、一年で一番といってもいいほど大忙しの日になってしまいます。
そこで、クリスマスの次の日には使用人たちに休暇が与えられました。
そしてその日に、主人からプレゼントをもらえるようになっていったのです。
さらに、休暇を与えられた使用人たちはゆっくり家族の元にも帰ることができて、家族にプレゼントをあげることができました。
こうして、12月26日にプレゼントの箱が登場するようになったというわけです。
「box=募金箱」という説
「box=募金箱」という説は、教会のとある伝統的な習慣から来ています。
昔から教会では1年を通して寄付を集め、その寄付金を箱の中に入れていたそうです。
そして、その募金箱を25日のクリスマスに開け、26日に中の寄付金を貧しい人々に手渡していたとのことです。
今でもクリスマスは、世界中を通して一年で一番チャリティ活動が盛んになる時期でもあります。
この教会の寄付金集めの習慣も、ボクシングデーができあがるのに一役買っていそうですね。
これら2つの説を見ていくと、ボクシングデーの本来の意味とは、
- 「クリスマス当日にクリスマスを楽しめなかった人々のための祝日」
だということがわかります。
現在のボクシングデー
では、今となってはボクシングデーって何をする日なのでしょうか?
現在のイギリスでは何をして過ごすのか、何が行われるのかを、細かく見ていってみましょう。
フットボール
イギリスといえば、フットボール(football=サッカー)ですよね。
現在では、ボクシングデーは「フットボールがとっても盛り上がる日」となっています。
フットボールは通常、クリスマス当日には試合がありません。
その代わり、26日のボクシングデーにはお昼から夜まで一日中、フットボールの試合が行われるのです!
プレミアリーグは、ボクシングデーには10試合ほどの試合が行われるそうですが、この日のチケットは超入手困難なのだとか。
観客席には、サンタクロースの帽子をかぶって応援するサポーターたちがたくさんいます!
ショッピングセール
イギリスをはじめとするキリスト教圏の国では、クリスマスはどこのお店も休んでいることが普通です。
そして、その次の日のボクシングデーにはだいたいどこのお店でも大型セールが行われます。
スーパーマーケットから高級ブランドのお店までがみんなセールをするので、たくさんの人たちが集まります。
ショッピング街はもう大にぎわいです。
祭日の次の日のセールっていうと、日本でいうと1月2日、3日みたいな感じですね。
余った食べものの消費
クリスマスには、普段会えない家族や親戚、友人が集まります。
そして本当にたくさんの食事を用意して、みんなで食べます。
そうすると、食べものってだいたい余ってしまうことが多いです。
そんな「余った食べもの(leftovers)」をたくさん消費するのが、ボクシングデーになります。
- ターキーやハムなどのお肉類(「cold meat」と呼ばれるもの)
- サラダとかマッシュポテトなどの副菜
- パイなどのデザート類
特にこういったものは残りやすく、ボクシングデーに持ち越されます。
余ったターキーとか野菜を組み合わせれば、サンドイッチやスープなんかも作れてしまいますね。
そういった手軽なものを食べながらテレビを見たりして、のんびりと一日過ごす人も多いようです。
イギリス以外のボクシングデー
ボクシングデーはイギリスでできた祝日ですが、「過去にイギリスの植民地だった場所」でもボクシングデーがあります。
ここでは、ボクシングデーが祝日になっている代表的な国を少し紹介していきます。
カナダのボクシングデー
カナダでは、一部の州を除き、ボクシングデーが祝日となっています。
イギリスと同じく、ショッピングセールが大々的に行われます。
そのほか、アイスホッケーU20世界選手権などもボクシングデーに始まることがよくあります。
アイスホッケーのようなスポーツを、テレビなどで楽しむ人が多いようですね。
オーストラリアのボクシングデー
オーストラリアでも、ボクシングデーは一部の州を除いて祝日となっています。
オーストラリアでは夏休みと重なることが多いです。
そのため、帰省したり遠出をしたりする人が多いのだとか。
そしてやっぱりスポーツイベントが目白押しで、クリケットやヨットレースなどが盛り上がるそうです。
ニュージーランドのボクシングデー
ニュージーランドでもボクシングデーは祝日です。
オーストラリアと同じく、ニュージーランドのボクシングデーも夏休みと重なります。
リラックスをして過ごしたり、海に遊びに行ったりする人が多いようです。
香港のボクシングデー
香港でも、ボクシングデーは祝日になっています。
上の3国とは違って英語圏ではありませんが、イギリスの祝日が制定されています。
やっぱり香港でもセールが目白押しのようで、ショッピングが存分楽しめるようですね。
まとめ
今回は、「ボクシングデー」の由来や本来の意味、そしてイギリスではボクシングデーにどんなことをするのかを見てきました。
もともとは、恵まれない環境にいる人たちを思いやって作られたボクシングデーでした。
でも、よりたくさんの人がクリスマスを楽しめるようになった今、ボクシングデーはクリスマスの余韻に浸りながら、フットボールやショッピングセールなどのイベントを思い切り楽しむ祝日となっています。
祝日を一日取り上げるだけでも、イギリスの文化が時代によってどう変わっていったのかわかって、興味深いですね。
ボクシングデーはイギリスだけでなく、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドや香港などにもある祝日です。
もし12月26日にそんな国にいることがあったら、ぜひボクシングデーの文化に注目してみてください!